名古屋高等裁判所 昭和26年(う)750号 判決
原審で取調べられた証拠によれば本件政府管理米たる粳玄米四等品五俵は原審相被告人矢野善三が前記小熊村農業協同組合の倉庫係として右米を業務上保管していた大橋志郎と共謀して他に売却する目的で勝手に右倉庫から搬出横領したものであることが明らかであり、又被告人の前記各供述調書によれば被告人は右矢野善三の右米の搬出については同人が右倉庫から米を出せる筈もないし内密で持出すのではないかというような感じがした。とか矢野善三が右倉庫から本件の米を出すことについては怪しい米と思いましたがどうして売つてくれたかは知りませんがとにかく矢野善三が悪いことをして売る米だと思つていた旨の供述記載があり之によれば被告人は矢野善三が本件の米を右倉庫から窃盜乃至その他の財産犯によつて持出したことを察知して買受けたことが明らかである。而して賍物故買罪の成立するには犯人が賍物即ち他人の財産権を害し不法に領得したる物なる情を知りて之を買得するをもつて足り、その如何なる犯罪―例えば窃盜罪、横領罪、詐欺罪等―に因つて取得せられたものであるかの点についてまで知悉する要はなく之を本件についてみるに被告人は本件の米を買受くるにあたりそれが右説示のように何等かの財産犯の行為によつて取得せられた賍物である情は十分に之を知悉しており、ただその犯罪が右説示のように横領罪である点にまで法律的判断を加えることのできなかつたものと推測せられる次第であり、従つて被告人の本件米の買受行為は右説示の理由によつて賍物故買罪にあたることが明らかであり、原判決の挙示する各証拠によれば該事実が十分に認められ、この間原判決には所説のような事実誤認乃至理由のくいちがいの廉はなく又原審がこの点について所説のように不当な控訴審の判断に拘束された節も認められなく論旨は之を採用しない。